Jazz meets Blues

手紙のように書きとめる、音楽やライブの記憶、地元のお店の思い出。

長谷川町蔵×久保憲司 トークイベント (青山ブックセンター) 2017年2月26日

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町田を舞台にした小説「あたしたちの未来はきっと」の長谷川町蔵さんと、同じくウィッチンケアより出版された久保憲司さんとのトークイベントを青山ブックセンターへ聞きに行ってきました。
司会は美馬亜喜子さん。3人ともクロスビートに関わった共通点があるそうです。
 
久保憲司さんは存在そのものが魅力の方で、そのお話には酔うように引き込まれてしまいました。でも、町田好きとして町田ノイズ長谷川町蔵さんの作品を知ったので、こんな話を聞いてきた…と感想をまとめるとどうしても話題が片寄ってしまいます。
 
※メモしていたものを見ながら思い出しつつ書いていたので、不正確な点も多いと思います。後日ウィッチンケアのサイトからオフィシャルなイベントレポートが出るのを期待!
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ペンネームについて
ブログに、サザエさんのパロディ漫画を載せる時に、長谷川町子から付けたのが最初だそうです。
仕事として執筆を始める際に、長くは続かないかなと、この名前をそのまま使うことに決めたとのこと。その頃は冗談で、いつか小説を書いたら長谷川康に改名するぞと話していたそうです。
町田康の「町田町蔵」は、ど根性ガエルの町田先生が由来と説明しながら、80年代のアングラのスーパースターが芥川賞作家に…とお二人とも思い出深そうに話されていました。
 
◆執筆のきっかけについて
文化系のためのヒップホップ入門がきっかけで、ウィッチンケア編集の多田さんからコンタクトがあったのが2011年。
なんでもいい…とのことで、普段の映画や音楽評論の仕事では絶対に依頼されないものにしようと小説を書くことを選んだそうです。2013年より執筆開始とのこと。
 
◆町田を舞台にしたこと、少女たちを描くという着想について
2010年にデビューした少女時代が話題になった際に、30代以上の男性をターゲットにする日本のアイドルと違って、アメリカのガールズグループのように同性の10代をターゲットにしていたのが印象的だったとのこと。
高校で出し物の場があればきっとクラスの中心にいるような女子が歌うんだろうな…と作品にすることを思い描いたそうです。ただ長谷川町蔵さん自身が男子校出身のため、女子高生を描くのは断念。中学生なら男女差が少ないかもと執筆を始めたそうです。
執筆していく中で、前の章の設定を引き継ぐことと、関連人物を登場させることを決めたとのこと。ウィッチンケアの刊行に合わせて執筆していくと次第に登場人物たちも年齢を重ね、避けようとしていた高校生を描くことにもなったとのこと。
編集の多田さんが町田の方なので、多田さんに喜んでもらおうと町田の固有名詞を入れたのだそうです。行き当たりばったりだったけれど、結果的に町田がテーマになったと満足そうに話されていました。
 
◆具体名が多く使われることについて
具体名がある方がリアリティが感じられて好きだとのこと。知らない言葉が出て来て分からないと苛立つ読者を想定するより、知らなくてもいいといった書き方を好むとのこと。それは久保さんも同じだそうで、司会の美馬さんからは今回の作品ではどちらにもフジロックの話題が出てくるという共通点もあるというお話もありました。
具体名の話の流れでの会話。
久保さん「ノイズにも行ってみたい」
長谷川さん「すごいいい店ですよ」
このやりとりを聞けたのは、町田ノイズファンとして感無量です。
 
◆観覧者からの質問
後半、観覧者からの質問にも答えてくださいました。
 
Q. 「ミューズのための護身術」で、不眠という護身術が出てくるのはなぜ?
A. 20代の頃のように寝ないでいることが、30代以降はできなくなった。絶対寝ない、いかなる時でも起きているというのが最強だと思う。
 
Q. 「わたし」とせず「あたし」としたのはなぜか?
A. 実際は「あ」と「わ」の中間で発音しているはず。
この話題の流れで、長谷川さんから女子の言葉が不自然じゃないかとお客さんたちヘ逆質問もありました。校閲の方に関東の西の方、神奈川の方を選び、確認してもらったとのことです。今は均質化しているだろうけど、語尾に「じゃん」を付けるような地域差があるということを意識されたそうです。
 
司会の美馬さんから、楽譜が載っいることについての話題もありました。
長谷川さん曰く、この章は2時間で書いたけれど、楽譜のためには2日かかった、とのこと。キーボードで製作し、PCのソフトで譜面化したそうです。
 
◆最後に
イベントの最後に、長谷川さんからの提案も。
読み終えた後に、時系列に読み直してみるのも面白いかも?とのこと。最初と最後は7年の時間が経っているけれど、その間の時系列は入れ替えられていて、それは構想段階でルーズリーフに書き出したものを入れ替えながら練ったのだそうです。
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トークイベントが終わった後に、長谷川町蔵さんに町田の久美堂で買った本にサインをしてもらいました。
「町田ノイズが好きで」とお伝えすると「今はジャンプ置いてないんだってね」と話題を広げてくださりました。
緊張していて「ジャンプはないけど、手塚作品はじめいろんなマンガが置いてあります!」というお話はできませんでした。
 
三浦しをんさんの「まほろ駅前多田便利軒」は映画化マンガ化もされ、町田にはまほろ座というライブレストランも生まれました。
「あたしたちの未来はきっと」も、いつか町田でのイベントに繋がらないかな…
 
 
「あたしたちの未来はきっと」
(ウィッチンケア文庫)